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一般的なオーダー家具とは、大変高価なものです。

こういうハンドメイドな家具は、無垢材や集成材が使われることが多く、材料代自体が非常に高額です。
それに加えて、こういった材料を加工するためには大型の機械が必要となります。
木の種類にもよりますが、無垢材などは材料が硬いので、一般的に手に入る丸ノコの出力ではきれいに切り分けることなどできません。
つまり、材料を加工するための機械の維持費や電力といった経費がそれだけかかってしまう、ということです。その分、どうしても高額になってしまうのは、無理もありません。

僕が勤めていた職場で作っていた店舗什器などの場合、無垢材などは滅多に扱いませんが、外面の仕上げはメラミンやポリ合板といったものを使います。
これらは、1800mm×900mmの3×6(サブロク)サイズで、4000~15000円といったところ。ホームセンターで売っている同じサイズのラワンベニヤや針葉樹合板の約5~10倍の価格です。
こういったものを外面などに張り付けて仕上げていくのです。
家具を作るとき、家具としての形とするまでは案外すぐにできます。外面を仕上げていくのが、最も時間がかかるのです。

以上のように、家具を作るときは、外見を良くすることに最も費用と時間のコストがかかってしまいます。
転じて言えば、ちょっと言い方が悪いですが、外面が適当で良ければお金も時間もかからないのです。

逆に、外面だけがとりあえず仕上がっていて中身が全然ダメなのが、工場の生産ラインで作られる既成品家具です。
カラーボックスなどを使っていたら、簡単に穴が空いたり雑誌の入れ過ぎで棚が反ったりした、という経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか?
以前、ご近所さんの依頼で既成品の大きな収納棚を解体したことがありました。
その時、使える板や部品があれば取っておこうと思っていたら、そんなものは全くありませんでした。
すべての部材が、その家具の形を構成するためだけに機能していて、必要なければゴミになるしかないのです。
よく「既成品の家具の高さを変えたいので切って使う」という話も聞きますが、それならばはっきり言って作り直したほうがいい、というわけです。


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話が少しそれましたが、要するに外面の仕上がりに手間をかけなければ、格安でオーダー家具をつくることができます。

僕が家具を作る際に「ホームセンターで手に入る合板や端材」という材料にこだわるのは、そういうわけです。
これらの材料は、家具をかたち作って化粧板を貼るための下地材として使用するもので、本来外装として使用するものではありません。
ましてや、端材をつなぎ合わせて外装に使う、などというのはもっての外です。
そんなことをすれば「なんだ?このみっともない仕上げは!」と元請けからのクレームは必至です。
でも僕は、使う場面がない合板や化粧板の切れ端がたびたび廃棄されるのを見て、もったいないなぁ、と常々考えていました。

まあ、細切れの端材をつなげて使うのは、エコロジーといえば聞こえはいいですが、単にもったいないからというセコい理由であることも否定はしません。
そういった場合、つなげた端材で作った板は単独では使用せずに、4mm合板などに張り付けて強度を確保するので、材料代はその分浮きますが、これを貼り合わせることが結構手間だったりします。
しかし、こうやって端材をつなぎ合わせて作った板を塗装してみると、これがなかなか味わい深い。
実際に、7インチ・レコードケースの外装 (↓写真) がこういう仕上がりですが、「これがカッコいいよね」という、なかなかの高評価を得ていたりします。


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合板や端材を外装に使うなんて、同業者からすれば「そんな家具誰が買うんだ?」と、一笑に付されるでしょう。
しかし、そういったものを必要としている人々は必ずいると、僕は思っています。

針葉樹合板やOSB合板というものは、安い材料とはいえ塗装すればなかなか味わい深い雰囲気を醸し出します。
見た目がラフな感じでも、頑丈で使い勝手がよくて味のある家具は、格安でもちゃんと作ることができます。
見た目がラフでも、既成品家具のような無機質で薄っぺらい仕上がりのものより、断然カッコいいと僕は思います。
要するに「プロの職人の手によるDIY家具」という捉え方をしていただければ結構です。
レストランのシェフが残り物で作るまかない、という捉え方でも良いかも知れません。

DIYだったら自分で作ればいいじゃないか、と思うかも知れませんが、丸鋸でまっすぐに材料をカットしたりトリマーで溝を掘ったりという作業は、一般の方ではなかなか難しいと思います。
ましてや、賃貸マンションにお住まいで作業ができない方や、そもそも工作が苦手な方もいらっしゃると思います。
それでも、お金があまりなくてもレコードやCD・本・フィギュアなどのコレクションを整理したいとか、カッコよくて落ち着ける部屋作りをしたいとかを常々考えている、かつての僕のような人は沢山いらっしゃるのではないでしょうか?

そういった方々の「秘密基地」を作る手助けとなれば、と僕は考えています。


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家具といえば高級なオーダー家具かホームセンターの既成品しかない、というのは、音楽に例えるならクラシック音楽か安っぽい歌謡曲しかない、というのと同じです。
僕の好きなジャズやロックンロールという音楽は、高尚な芸術ではないけど安っぽくもない。個性的な人生を過ごすためのサウンドトラックなのです。

僕の作る家具はそういうものでありたい。

人とは違う個性的な人生を過ごしたいと考えるあなたの傍らに、midd craftの家具をぜひとも置いていただきたいと願うばかりです。