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家具職人の仕事というのは、大まかに2つに分けられるようです。

1つは無垢材や集成材などを使って、テーブルやイスなどの個人住宅向けの家具を作るというもの。
飛騨高山の工房などが有名なところですが、もっとお求めやすいところだと無印良品の家具などを想像すると良いでしょう。
一般的に『家具職人』と聞いて連想するのは、こういった人達ではないかと思います。「作家」とも呼ばれる方もいらっしゃるのではないかと。

もう一つは、「芯材」という材料で作った枠組みを「ポリ合板」という化粧板で挟み込むようにして木工ボンドで貼り合わせる『フラッシュ』という技法を用いて部材を作り、それを組み立てて天板や見付けの部分にはメラミン(デコラとも言います)という1mmほどの硬い化粧板を速乾ボンドで貼り付けて、ひとつの家具に仕上げていくというものです。
もちろん、必ずしも毎回その技法を用いる訳ではなく、部分的にコンパネや集成材などを用いることもあります。
こちらは主に、ショッピングモールの飲食店や百貨店、美容院や居酒屋など、店舗用の什器を作ることが多いです。

僕がこれまで働いていた工場で行っていた仕事は後者です。
無垢のテーブルなどをつくる『家具職人』の方が、一般的には何やら高尚なイメージがあるようですが、前者と後者の仕事は似て非なるものです。
寿司職人のように長年の経験で蓄積された腕前がものをいう前者と比べて、後者は応用力と要領の良さが重要になります。
ああいった店舗什器は、工場の流れ作業のようなもので作られるイメージがあると思いますが、そういう作り方をするのはホームセンターに売っている既成品の家具であり、吊り棚やレジカウンターなどの店舗什器は、毎回図面を起こして製作されます。

僕がこれまで行っていた仕事は、昔で言うところの『3K』(キツい、汚い、危険)というやつです。
同じ職場の方々もみんな中卒・高卒の方ばかりで、どうやら高学歴の方が就く仕事ではないようです。

しかし、僕はこれほど高度にクリエイティブな仕事を他に知りません。
いかにコストをかけずに頑丈で美しいものを素早く仕上げるか、というのを頭と体をフルに使ってこなしていく。
他の業種も同じだと思いますが、いつも限られた予算と差し迫った納期が決められていているので、のんびりとマイペースで作る、などということは当然許されず、その現場ごとに寸法や仕上がり具合なども毎回違うので、当然マニュアルなどはありません。
引き出しや扉などが複雑に設置してある図面などを渡されることも多く、「こんなのどうやって作るんだ?」と毎回頭をひねっていたものでした。
化粧板の材料なども、いかに無駄なく使うか切り方をその都度考えなければならず、少しでも切り方を間違えてしまうと、高い材料をまるまる無駄にしてしまうこともあります。
なおかつ、機械に取り付けたむき出しの巨大な電動ノコギリを扱っているので、常に危険と隣り合わせ。恥ずかしながら、僕も指を切る、というより裂いたことも、一度や二度ではありませんでした。

去年まで8年間働いていた工場は親方がとても厳しく、少しでも見当違いな方法で仕事を進めていたら、怒鳴り散らされる毎日。精神的に叩きのめされて、毎回勉強する日々でした。
正直、ツライなぁ、情けないなぁといつも思っていましたが、仕事が嫌いだと思ったことは、一瞬たりともありません。

家具を作る。僕にとって、これほどやりがいがある仕事は無いと、自信を持って断言できます。

結局、先輩たちには追いつけないまま退職してしまいましたが、厳しい職場で何度も失敗して得た技術は、今後のmidd craftの仕事に大いに生かしていけると思っています。